前半はこちらIID世田谷ものづくり学校の日本の「モノだけではなくコト=文化創り」

日本のものづくりに必要なのは文化的な土壌

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では徐々に話題をものづくりにシフトしたいと思います。例えば、東京都の台東区は作家さんやクリエイターの方が結構住まれていますよね。あまりこの世田谷近辺ではきかないですよね。

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それは仕方ないかもしれないです。産業があるからその場所に人が残るんです。

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世田谷で柱となる産業は何かと聞かれると、すぐには思いつきませんよね?この辺りには昔から根付いて活動する職人さんは少なくて、別の場所から移転してきたクリエイターが多いと思うんです。

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そもそもの土壌が台東区等と違いますね。

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世田谷にクリエイターを残していくのは結構ハードルが高いことだと思います。ものづくりって文化がないとその地に根付かないですから。

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産業があってこその生態系みたいなものですもんね。

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ですので、「コトづくりとモノづくり」が同時に起こるコミュニティーをIID 世田谷ものづくり学校で創っていきたいんです。私たちがワークショップをこれだけ開催するのは、その文化土壌自体を創りたいからなんです。

F85A2288-2【こちらは撮影スタジオ・イベントスペース等で活用されています】

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そう言えば、株式会社ものづくり学校さんの新潟の拠点「三条ものづくり学校」では、周りの製造事業者の数が段違いなんじゃないですか?このエリアは最近は国内で最も注目されていると言っても過言ではないですよね。

※燕三条・・・日本の金物(金属製品)の産地。近年は「工場の祭典」などの精力的なオープンファクトリーイベントが話題。

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そうですね。世田谷区の工業会「世田谷工業振興協会」の会員数は約150社。それに対し新潟県三条市の工業会「三条工業会」では約520社もあるんですよ。

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雲泥の差ですね。

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新潟県の燕三条の地域と足並みを揃えることが出来れば、今後面白いことになるのでは、と思い開設したんです。

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新潟県の燕三条は鍛冶の技術や、金属加工の技術で国内の注目を集めていますね。あとは、この流れで言うと、最近の社会の風潮的には「良い物」が見直されている面もありませんか?

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うーん…そうですね。ものづくりってすごく難しいですよね。それでもやはり、良い物を使う文化って昔に比べるとなくなっていますよね。

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例えば燕三条の地域のものづくりの話でいうと、農業で使う桑(くわ)ありますよね。あの桑の先端部分はあえて鋼(はがね)の柔らかい素材で出来ています。わざわざ鋼が鉄に付けてあるので、使用する際に弾力性もあり、減ったら交換するんです。そうすれば価格の高い鋼の使用量は少なくて済む。資源が少ない日本だからこその、ものづくりの形がこんなところにも現れていたりします。

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日本独自の文化的な背景があるからこそ、残るものづくりの形があるってことですね。

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そう。なのでやはりこの文化をコトとしてしっかり残していくことが日本のものづくりの未来に繋がると思っています。

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そうですね。日本の技術力に関してはどうですか?

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そこに関しては思うことがあります。

日本のものづくりが陥る盲点。しっかり使われるモノを作る重要性。

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日本の素晴らしい技術力をありったけ盛り込んだモノが必ずしも売れるとは限らないと僕は思っています。

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たとえば、あるメーカーの金属製品は、鍛冶職人が培った技術を駆使し、驚くほど薄く加工した製品を作りました。でもそれは、職人に言わせると製品のブランド刻印が無ければ、さらにもっと 技術的に薄くできるそうです。

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そうなんですね。そこまで薄く出来るなら薄くする方が良い…。と考えがちですが、消費者からすれば、製品の薄さよりも刻印のブランド感の方が必要ですよね。

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日本の技術がすごいってことを伝えたいのであれば、最も薄くするのがベストです。しかしそこをあえてしない選択肢もあるんです。ブランド刻印があることで売れるからです。メーカーが望むものづくりでは、売れるものを作らなければ意味がないんです。

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消費者にとっては技術のオーバースペックは意味がないってことですね。

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今までは、技術を自慢するだけのものづくりが日本人は得意なんじゃないのかな?なんて思ったりもします。

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確かにハードスペックだけにこだわっている様な風潮は家電なんかにもありますよね。スマートフォンなんかもそうかも知れないです。

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こんな話を良く聞きます。海外での展示会でのことです。『この技術がすごい!』なんて感じで、モノの凄さをとうとうと語るのは日本人だけらしいですよ(笑)欧米の人は、そのモノの使い方を本来語るべきだと思っている様で、しっかり消費者に寄り添った提案をしています。

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それは分かる気がします。生活に落とし込んだ提案やアイディアも必要ですね。

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確かな日本の技術に、デザインやアイディアをのせて、今の社会で実用的に使われるモノを生み出す。これが大切だと考えていますので、本当に価値のあるものづくりが起こる「場づくり」を株式会社ものづくり学校でもやっていきたいんです。

F85A2272【最新のデジタル機器を揃えたFabスペース】

日本の製造業の構造上の課題と、異業種のものづくりで起こる新しい価値。

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それでもやはり国内には面白い技術があるのも事実ですよね。

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そうですね。工場や職人さんは、自分たちの技術の凄さに気付けないでいるケースがあるんですよ。

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超特殊な技術や、普通はできない素材の加工が出来たりする方も実は多いんですよね。

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日本にはそんな方々が沢山います。絶対出来ないと思っていた技術でも、町工場の人に聞いてみると『えっそれならうちで出来るよ?』なんてこともざらです。ですが、大企業との契約では、工場の技術を外に言うことや出すことは難しいんですよ。

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もったいない。なんかいい方法は無いんですかね。

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企業が掲げているその技術の特許を見ると、抜け道は意外とあるかも知れません。

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これからの時代は特に、ものづくりの中でも全く違う業界同士が結びつくことで、化学反応が起きて、新しいことが起きていくんだと思います。

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確かに産業の構造上、国内ものづくり事業者同士の中でも、異業種の繋がりは薄い感じはありますね。

_MG_0254【三条市の中心に位置する三条ものづくり学校】

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そんな背景もあり、三条のものづくり学校では、三条市とシステムインテグレーション株式会社 代表の多喜さんを中心に、世の中にないものをどう作り出すかの研究会がスタートしています。違う業種の10社が集まり、特許自体を三条市で抱える形で新しいモノが作れないかと画策しています。事業者は市の特許を使用して地域でものづくりが出来る。そんなシステム作りをしていきたいと思っています。

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そんなところにまで手を広げているんすね。頑張って欲しいです。

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今は詳しく言えないんですが、自分たち主導で新しい商品も開発しようと試みています。確かな技術を使い、面白いアイディアをそれに掛け合わせる。実際にしっかり生活に役立つ形で考えています。

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実際に生活で使えることは大事ですよね。

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これは余談ですが、新潟県の燕三条エリアには、別に大きな車の工場があるわけでもないんです。でも町工場がいたる所に点在しています。なんでこんなに事業者や独自の技術が残っているのか、とても不思議です。本当に魅力的ですよ。

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そう言われると神秘性すら感じます(笑)今後はこの三条の製造事業者と世田谷のクリエイターの組み合わせでも化学反応が起こりそうですね。

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そうですね。繰り返しになりますが、私たちはクリエイターやデザイナーと、日本伝統の文化を守っている地方の製造事業者や職人が繋がり、コトが起きていくプラットフォームを目指します。それをまずは世田谷を中心にやっていきたい。今後も日本のものづくりを活性化していきたいと思っています。

10年でやっと整った土壌。IID 世田谷ものづくり学校がこれから起こす挑戦。

F85A2279【こんな入居者さんまで。元教室内は立派な工房です】

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ものづくりという言葉にもこだわりがあるんですよね。

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はい。『ものづくり』という単語をそのまま海外に発信していきたいんです。日本のものづくりの魅力って、ただの工業では現せないじゃないですか。英語にするとManufacuturingやFabricationと訳されることが多いんです。これとは少し意味合いが違うと思うんですよ。『ものづくり』という言葉自体を海外に発信して行きたいんです。

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日本のものづくりには「製造」だけではない沢山の要素が含まれていますもんね。

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やっと私たちは10年をかけて、ものづくりのプラットフォームの土壌が出来たと思っています。ここから先は私たちが持つノウハウ、ネットワークを様々なジャンルの人に活用してもらい、化学反応を起こしていきたいです。

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入居者の方とはフラットな関係性でいつつ、仕事をマッチングしたり、事業活性化のためにサポートしたり。仕事場としての環境以外にも、もっとメリットを感じてもらえるポイントを増やしていきたいです。

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それこそ、初めは地域の方に認めて頂くのに時間がかかりました。中学校が仕事場に変わり、そこで働くクリエイターは夜中まで作業していて、いったいここでは何が起きているんだ?なんて不信もありました。地域のコミュニティの一つとしてやっていくのは苦労が多くあります。しかし、今では信頼も獲得しつつあり、近所に住む方々が気軽に遊びに来てくれたり、地域の商店会の集まりに参加したり、小学校へ出張ワークショップなんかも開催したりしているんですよ。

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基盤を作ったり、信頼を得るには時間がかかるものですよね…。やってて良かったことは何かありますか?

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IID 世田谷ものづくり学校ではじめたビジネスモデルが評価されたことですかね。新潟県の三条市については市長が世田谷へ来て感動してくれたんです。これをきっかけに、最終的に三条にものづくり学校を作ることになりました。これには感慨深いものがありましたね。

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ものづくりプラットフォームIID 世田谷ものづくり学校で起こる化学反応。

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これからが楽しみですね!

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本当にここからだと思います。言い方を変えれば、今はやっと皆さんと繋がりを持てただけ。ここから先に何を起こすか、そして何が出来るのかだと思っています。その時に初めて何か成し遂げることができて良かったと言えるのかも知れません。繋がるまでは簡単ですからね。

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それは僕たちにも言えることです。沢山の現場の方と繋がりを持てた今、ここから自分たちに何が出来るかですよね。

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そこから先に繋げるのが本当に大変ですよね。一つ一つ地道にやっていくしかないんだろうね(笑)。

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IID世田谷ものづくり学校を含め、3つの廃校活用施設を運営する株式会社ものづくり学校。地域特性を活かした場づくりを続けるとともに、各拠点を連動させ、相乗効果を生み出そうとしています。そして伝統・人・コンセプト・体験など、ものづくりにまつわる付加価値に重きを置いた、日本独自のものづくり文化を育み、 残していくことを目指します。

今後はIID 世田谷ものづくり学校から、日本のものづくり文化を担う新たな製品やビジネスが生まれる仕掛けづくりが始まります。

ものづくりにとって、文化を残すことが根本的に必要であること。そしてその為にはある意味、今の日本人の過度な技術偏重は、是正されるべきタイミングなのではないだろうか、と高山さんの話を聞いて思いました。

「いつも自分自身が、何が起こるのかワクワクしているんですよね」

そんな風に話す、ものづくりとキャンプが大好きでお洒落な高山さんの率いる世田谷のクリエイターベースから今後「何か」起こりそうな予感です。

ー完ー

 前半はこちらIID世田谷ものづくり学校の日本の「モノだけではなくコト=文化創り」

作者情報(一覧を見る)
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大滝 洋之

Brightlogg,Inc.代表
歴史と伝統に敬意をはらい、ものづくりを現代の価値観で再解釈し、未来に繋げることを目指す。都内を中心に全国を巡りセコリ百景を運営する。http://www.brightlogg.com/