前半はこちら良いものを作っても売れない時代。「これからの売り方の処方箋」台東デザイナーズビレッジ鈴木村長インタビュー【ファッション編】

ファッションクリエイターとして成功するにはどうすれば良い?

織物工場見学-min工場や職人さんとクリエイターをつなぐこともデザビレのミッション

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次は、鈴木村長の畑でもあるファッション業界でのものづくりについて深く話を聞かせて下さい。デザビレに入ってる方は基本的にファッションを中心としたクリエイターの方ですよね。

鈴木村長

そうです。手作り作家の状態からスタートし、卒業までの3年間で工場や職人への量産体制を作り、巣立っていくパターンが多いです。

鈴木村長

洋服は、3着ぐらいまでなら自分で縫うことができます。それが10着なら1週間の作業時間がかかる。その間クリエイターはずっと縫製していて、営業や発信ができなくなる。だから量産を工場にお願いしたい。しかし縫製工場の最低ロットが30着だったら、請けてもらえない。そのロットの狭間をどう埋めるか?これがものすごく大事な課題です。

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ファッション業界のクリエイターが制作に追われている姿を良く見かけますね。

鈴木村長

だからデザビレでは工場見学を行い、工場と人間関係を作るところからスタートします。工場にも、なんとかいつもより少ないロットでお願いしてやってもらう。その代わり、クリエイターも注文数を増やす努力をするし、売りつくす覚悟がもちろん必要です。

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具体的に工場にはどうお願いしてるんですか?

鈴木村長

自分の将来性を伝えたり、ビジネスプランや熱意を伝えたり、他のつくり手を紹介して工場の仕事を作ったり、小ロットの手間に対してコストを支払う……無理を言うだけではなく、相手のことを考えて「応援してあげよう」と思われる関係性を築いていくことが大事です。

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ものづくりにかける情熱と、当たり前の気配りが大切なんですね。

鈴木村長

はい。前提として、工場は仕事を始めたばかりのクリエイターとあまり仕事をしたいと思っていません。その理由は、
・注文ロットが細かい
・仕様が分かってない(どの様に作っているのか知らない)
・次の注文が続くか分からない
・態度や話し方が生意気
例えを上げればキリがありません。工場はできるだけ稼働率を高めたいんです。新米クリエイターの仕事でも、大きな仕事でも、準備工程にかかる手間は同じだから、本当は小さい仕事はやりたくないもんなんです。

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工場としては当たり前の話かも知れませんね。

鈴木村長

ですから機械で勝手に作れるんでしょ?と言った態度では絶対ダメ。現場の仕事に対する理解を基に、職人さんへの尊敬の念をもってお願いしないとやってくれないと思います。

鈴木村長

それに、工場の現場を知るといい事がたくさんあるんです。宝石工場で研磨中の宝石を見ると「これ、つや消しで意外とかわいい」とそのまま商品になったり、ジュエリーの加工工程を知ることで、技術を応用して全く新しい商品が生まれることもあったりします。

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工場での作業工程を実際に見ることは、デザインする側の人にとってはマストですよね。

鈴木村長

デザイナーと職人がいて、その間に仕様書が挟まれると、両者にとって「仕様書に合っているかどうか」がアウトプットの基準になってしまいます。でも本来は、デザイナーと工場はもっと密にやりとりをして「お客様のために、もっと良いものを作るには?」を考えないといけないと思います。そんな関係が工場とデザイナーの理想の形であり、良いものづくりの基盤ではないでしょうか。

鈴木村長

工場の人たちはモノの価値を生み出し、深めるのが得意です。デザイナーはその価値をどこの誰に魅せるのか、デザインを含めてチューニングするのが得意です。裏を返せば、デザイナーはモノの価値を深めることは出来ません。だから両者が上手く手を取り合わないといけません。最近、自らプロダクトを作るファクトリーブランドを立ち上げ、うまく行ってる工場は、内部にデザイナー資質を持っている人がいる印象があります。工場とデザイナーは役割がそもそも違うので、どちらか一方だけではものづくりの成功は難しいと思います。

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工場がデザイナーさんを抱えた方が上手くいっていますもんね。デザイナーの方が新たに生産体制を作り上げるパターンよりは遥かにハードルが低いですよね(笑)

今後の日本のファッション業界に必要なこと

宝石工場見学-minものづくりの未来を担うデザビレのクリエイターたち

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まだまだ作り手側だけでも出来ることが沢山ありそうですね。日本のファッション業界におけるものづくりは今後どうなっていくのでしょう?

鈴木村長

基本的にはユーザーの要望に最適化する動きをすると思います。

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と、言うと?

鈴木村長

例えば、イタリアではシルエットやボディラインを重視し、着心地を重視する様な風潮が消費者の中にあります。だからその要望に最適化する。それが日本の小売では正確な縫製技術であったり、畳んだ時にキレイかどうかとか、管理面のことばかりチェックされてしまう(笑)だからあえて言っているんです、「それって本当にユーザーの要望なの?」と。ユーザーが本当は何を求めているかを、もっと知らなくてはいけません。

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ユーザーインサイトを知ることですね。

鈴木村長

日本の年配の方、ある一定以上の世代は、コーディネート能力があまり高くないので、ひとつのブランドの商品をセットで買っていたんです。それに対し、今の日本の若い人はものすごくコーディネート能力が高い(笑)私は世界で一番高いと思っています。

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おもしろいですね(笑)パリか東京か、なんて言われているのを聞いたことがあります。

鈴木村長

パリと日本でも違いがあります。それは日本のファッションには多様性があることです。今、コーディネートをする日本の若い子の中には、洋服の品質の良さよりも、コーディネートのパーツとして使えるかを重視していると思うんです。日本のファッション雑誌をみても、コーディネートばかりが重要視されてる傾向がありませんか?そこに素材の良さなんて言葉は基本的に出てこない。この傾向がずっと続いていて、どんどん消費者のモノ自体に対する知識がなくなり、見た目のコーディネート能力ばかり高まっています。さらにSNS等で自分のコーディネートを発信したりする。そんな時にこれから日本のブランドや工場はどのように対応していくのか?…実は私も答えは持ちあわせていないんですが、今後の課題ですよね。

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男性誌では素材に関する特集もあったりしますよね。

鈴木村長

ひとつ道があるとすれば、消費者教育が鍵なのかも知れないと思っています。何かムーブメントを起こす必要があるかも知れません。男性はうんちくが効く面もありますが、女性はうんちくではなく「かわいいかどうか」だけでも買いますよね。作りの良さが説得材料にはならない。どんなに狂いがなく、ぴっちり織られた生地でも、それが欲しいと思ってもらえなければ意味が無いんです。

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消費者教育をするか?生産者が時代の流れに合わせるか?自分の好きな道を貫くか?ですね…。

鈴木村長

つくり手側はどうしても、この生地すごいでしょ?って押し付けたくなる。でもそうではなくて、どうすれば欲しくなるのかを考える発想の転換も必要です。大きなアパレルからしてみても、本当は生地なんて世界中どの生地でも大丈夫なんです。基本は売れれば良いので。だから産地に代わって素材を発信してくれるわけではない。この文脈で、またつくり手側の情報発信が大事になってきませんか?工場もクリエイターと同じ様に、自分たちのモノの魅力を、自分たちで発信していくしかないんです。

「ファッション×なにか」で産まれる新しいビジネスのかたち

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ファッション編の最後に、ファッション業界のこれからを考えた時に、今後の業界のビジネスのあり方についてもお伺いしたいです。

鈴木村長

はい。新しいファッションビジネスは「ファッション業界と何か別の業界の間に生まれる」と思っています。ファッションだけで掘り下げていっても、今後は難しいですよね。

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新しいビジネスに必要なのは業界内の縦への掘り下げではないってことですね。

鈴木村長

ファッション×ITとか、ファッション×ハイテクとか…異質なものどうしの掛け合わせや中間領域に、新ビジネスが生まれると思っています。成功するかは、新たな市場を創造することができるのかがポイントになります。現状では、まだファッション業界内だけで繋がっていて、他業界と繋がらない傾向があるかもしれないですね。

鈴木村長

ちなみに、原宿ファッションの黎明期は、映画や演劇、音楽、編集などコンテンツを作ることができる人が業界の周りにたくさんいて、様々な要素が混じった結果として、文化が生まれてきたといいます。東京の多様性は、世界の中でも群を抜いています。でも今はファッションはファッション、映画は映画、ちょっと分かれすぎていますよね。ファッションがこれまで伸びてきたのは、ファッションだけで成功したわけでは無いんですよね。東京はこの多様性に関してはポテンシャルが高いはずなのに、活かせていないのがもったいないと感じます。

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触媒としてファッションをどう扱うのか、活かすのかが今後の鍵なんですね。

鈴木村長

私だったらアパレルにおける織物業界も、ITやヘルスケア業界など別業種との組み合わせが必要だと思っています。これこそ、東京だからこそ出来ること、日本だから出来ることなのでは。だって、世界からすれば日本は、トヨタやホンダ、ソニーがあるハイテクの国なんです。なのにファッションの中ではそんなハイテクなものはありますか?「超ハイテク服は日本でしか作れないんじゃないの?」「バイオやAI(人工知能)を活用した服を生み出すのは日本なんじゃないの?」そんな発想をする人が出てきてもおかしくないと思います。

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個人的には、ハイテク以外でも日本にしかない文化とものづくりをもっと横断的に考えていけば、面白い事業が生まれるかも知れないとも思ってます。「おもてなし」とか「侘び寂び」とか文化的要素とファッションを繋げて……。今後の新しい市場創出が楽しみですね。

ーファッション編 完ー

 前半はこちら良いものを作っても売れない時代。「これからの売り方の処方箋」台東デザイナーズビレッジ鈴木村長インタビュー【ファッション編】

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大滝 洋之

Brightlogg,Inc.代表
歴史と伝統に敬意をはらい、ものづくりを現代の価値観で再解釈し、未来に繋げることを目指す。都内を中心に全国を巡りセコリ百景を運営する。