皆さんが今身につけている洋服の中にも、これから紹介する工場さんが製造する素材が用いられています。なかなか表に出ることがないものづくり現場と技術の一部を紹介したいと思います。

そこには洋服を作る上では欠かすことのできない陰の立役者たちの存在があります。

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日常よく目にする繊維製品(タオル、絨毯、衣料品、シートベルト)は単糸(1本の糸)のままでは作れません。

複数の単糸を組合せて太く丈夫な糸を作り、それを織ったり、編んだりして作ります。複数の単糸を組み合わせて太い糸を作ることを「撚糸(ねんし)加工」と呼びます。

その撚糸加工の代表的なものに、合撚加工、カバーリング加工があります。最終製品の用途に合わせて糸は様々な方法で加工されていくのです。

カバーリング加工についての紹介をします。

②
石川県かほく市に拠点を置く、有限会社小山カバーリングさんに訪れました。

天然ゴムやウレタン繊維の芯糸を延伸させたものに、綿やウール、ポリエステルの糸を巻き付けたものを「カバーリングヤーン」といいます。

カバーリングは用途に合わせて、芯糸に一重に糸を巻き付けるシングルカバーリング、二重に巻き付けるダブルカバーリングといった撚糸の方法がとられます。

「カバーリングヤーン」を使ったものでは、靴下や手袋、ストッキングなどが代表的です。

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専務取締役の小山さん。生産現場では品質管理のため、製造の行程で静電気が発生しないように室内の温度管理と湿度管理を徹底しています。

糸の加工だけではなく、自社製品の企画と販売もしている同社。
「これからは現場作業の自動化を目指し、自社製品の販売と営業に力を入れていきたいと考えている。そのためにも製品のデザインやパッケージのデザインにも力を注ぎ、より魅力的に市場に提案をしていくことが必要になる。」と話してくれました。
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続いて、石川県白山市で糸染めを行う株式会社シコーさんを訪れました。

ポリエステル糸の染色(先染め)と特殊加工を行います。
主に分散染料という特殊な染料と染料補助剤が使われ、染色機を使って高温・高圧の状態で一定時間加工がされ、その後に洗浄やオイル処理がされます。

染色された糸はコンピュターシステムと人の目により色調の確認がされ、お客様のご要望に応じて分割し、定められた長さにコーンに巻きとられ、検査後に出荷されていきます。

生地を織る前に糸を先に染めることで豊富な色彩が表現でき、ムラのない深みのある色の生地が仕上がり、色落ちも少なくなるのです。

同社が染色可能な糸の種類は、繊度15dの超極細ポリエステルから900dまでと幅広く対応することを可能にしており、ロットが異なるリピート発注に対しても高い色調再現性を実現し、今までに積み上げた色数は3万色を超えます。

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また、染色数量も1kgからと小ロットにも対応しており、「お客さまの急な要望にも小回りを利かせ、対応できるのが強み。」と営業推進担当リーダーの立花さんは語ります。

染色以外では柔軟、撥水、抗菌など様々な特殊加工も行っています。
加工品はスポーツウエアの付属に用いられることが多いです。染色加工業は表に名前がでる機会が少なく、製造に沢山の人手が必要になることはなかなか知られていません。

機能性を備え、要望に沿ったカラーバリエーションの製品をつくるためには同社のような染色加工技術がなければできないことなのです。

ショップなどでは完成された商品が並んでいますが、その1つ1つの商品の背景を辿っていくと、こんなにも陰の立役者たちの活躍があるのです。特に北陸の糸の加工業は長い技術継承を経て、世界からも注目されています。

どんな商品が流れているのか、糸から逆流して商品の説明などもしていきたいと思います。

(下山和希)


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下山
下山 和希

東京の某アパレル会社でデザイナーを経て、2015年9月に金沢に移住。
北陸産地の工場や工房の訪問取材をしながら、金沢セコリ荘のディレクターを務める。金沢文化服装学院で教鞭も執る。