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「究極」=ものごとを突き詰めて、極める事

文字通り、糸・生地の編み・デザイン・パターン・縫製随所にこだわりが満載。
前回もカスタムTでご紹介した遠藤さんが生み出す「究極」のTシャツ。

今回はそんなTシャツのお話です。

僕はこの取材を通してTシャツに対しての価値観が変わりました。
今後Tシャツを購入する目は増々厳しくなってしまいそうです。

記事を読み進めるとみなさんも同じ思いをする事になってしまうと思います…。

 

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前回もご紹介した遠藤さんのカスタムTですらこだわりが満載の一品でした。
そのカスタムTは消費者の嗜好に合わせるという点において、顧客の声をくみ取った商品です。
それが今回は180度別の視点と言っても良い、言わば消費者の嗜好を一切無視し、遠藤さんという服作りのプロフェッショナルが考える、最も美しい素材で、美しい形を表現した、良い意味でかなり自己中心的な商品です。

Tシャツは良く着るものだし、汗もかくのでガシガシ洗って着たい。
洗濯機でも洗いたい。
でも、もちろん着心地の良さも重視したいし、動きやすいものが良い。

そんなワガママな条件を充たす理想のTシャツがここにあります。

 

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Tシャツに必要な要素をまとめてみます。

・タフであること。耐久性(素材の強度、ハリ、コシ/縫製部分の強度)
・着心地の良さ。快適性(生地の肌触り/人体にとって無理の無いパターン)
・身体のラインを綺麗に見せる。(パターンワーク/型崩れしない)

Tシャツに求められるそれぞれ要素を最高峰までに高めるため、つくり手の遠藤さんは構想に数年を費やしました。

さらに、素材開発とパターンの完成にまで丸1年。

なぜ、そこまでこだわるのか?

それは、遠藤さんが追い求めるTシャツが世の中には無かったから。

Tシャツなんか、どこのブランドもあるので、そんなはずはない…?

いいえ。

そんな理想のTシャツは世の中になかなか存在しないんです。

 

写真-(1)

 

その理由は、各ブランドそれぞれ事業としてアパレル販売を実施しているからです。

なぜ、最高のTシャツが世の中には存在しないのかを説明すると、理由は以下の3つがあげられます。

一つ目は、業界の慣習。
各ブランドは1シーズンでどのぐらいの枚数のTシャツを作るかを計画します。
後に、いくらで販売したいかを各ブランドの顧客層から決定します。
そこから利益を引いて生産のコストが決定します。
良いことの様に聞こえますが、モノづくりを進める人からすれば、この素材よりもこっちを使うほうが着心地が良いと思っていても、コストがかさみその素材は使えないという事象も発生します。

二つ目は、物理的な問題。
各ブランドTシャツ以外にもトップスやボトムスなど複数のアイテムを製造します。
つまり、一つの商品に1年の試作を重ねて開発するという方法は、物理的に厳しくなります。

三つ目は、経験と知識の問題。
遠藤さんは、各社のOEM製品(企画・営業・生産まで自分でやる形)を受ける事で、年間で数百ではきかない量の生地と接し、様々な企画をします。
遠藤さんには様々な顧客からの「もっとなめらかにしたい」などの要望に応え続けて来た豊富な経験があります。

何より、一番大事なことですが遠藤さんは生地マニアと言って良いほどの知識の持ち主です。

一人でこの一貫した製造の経験と知識、情熱全てを兼ね備える人は希少な存在であると言えます。

よってこの究極Tシャツは”究極”と自信を持って言えるわけです。

 

糸へのこだわり

 

糸[1]

 

単純に糸と言っても複数の要素が存在します。
・材料となる綿の繊維の長さ
・紡績 糸の作り
・糸の太さ
これらが着心地や耐久性に大きく影響してきます。

素材の綿(コットン)は世界三大高級綿のひとつであるアメリカ産の超長綿(ちょうちょうめん)のSUPIMA COTTONを使用。
※超長綿とは綿花の中の繊維の長さが平均35mm以上のもの。

その綿花を高品質な糸の生産で世界的に有名なスイスの会社に依頼し紡績した、最高品質のオーガニックコットン(地球環境や生産者の健康にも配慮したコットン)を使用しています。
今回使用している糸は、SWISS/SUPIMA/ORGANICという三拍子そろった非常に希少価値の高い糸です。

とは言え、希少価値が高い糸を使えば良いということではありません。
同じ糸でも糸の太さと、編みたてで生地の質が変わります。

糸の太さは40番。
この糸の太さを決めるまで、何度も何度もサンプルの生地を作り、試作を重ね、納得の行く生地を追求したそうです。

 

日本各地から選りすぐった生地へのこだわり

 

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・生地をなでた時、その表面感は上質な糸からなる滑らかさ、しなやかさがある。
・生地をにぎった時には、武骨さ、ハリ、コシがある。

既存の生地では共存し得ないこの相反する要素を、一つの素材に集約させたい。

その想いを形にするために、生地で表現出来る最高峰のタフさ、耐久性、着心地の良さ、快適性を共存させた生地を遠藤さんは独自に開発しました。

それが、40番の単糸引き揃えの度詰め(28ゲージ)生地【STELLAR CONFLICT天竺】です。

暗号みたいですね・・・一つ一つを解説すると、

40番・・・糸の太さ
単糸・・・紡績した1本のままの糸(単糸を2本撚り合わせたものを双糸と呼ぶ)
引き揃え・・・2本以上引きそろえてよりをかけてない糸
度詰め・・・1インチ(=2.54cm)間にある針数を増やして、編み目の密度を詰めて編みたてた生地

よくあるTシャツだと40番双糸22ゲージ~24ゲージ程度なので、同じ番手の糸を引き揃えることで手触りを維持しつつ、生地のギリギリまで度詰めすることにより強度を増しています。

そして今回の生地は、和歌山県の老舗編立工場の技術を最大限に駆使し、生産出来る限界ギリギリの28ゲージで編み立てているそうです。

上質な糸を使うと手触りがよくなる反面、タフさ、耐久性が下がる。
このことを解消するためのこだわり・・・またまたかなり奥深い世界です。

 

生地ビーカー

 

染色は、高品質綿糸の染色に精通している、こちらも和歌山県の染工場で行っているそうです。

ビーカー出しと呼ばれる、生地の見本を確認する工程があるのですが、染色職人さんいわく、上質の糸ほどよく染まるということらしく、今回の生地は染まりすぎてしまい、何度もビーカー出しを繰り返し現在の色に到達したそうです。

そこに「グレース加工」と呼ばれる特殊な加工をかけ、糸と編みで表現した特徴をより高めるための最終仕上げを施しています。

STELLAR CONFLICT天竺の相反する要素が共存する質感、独特のヌメリ感は、この加工をもって完成します。

 

デザインとパターンへのこだわり

 

1499164_482137205269491_946609733_o-(1)Tシャツのパターン図

 

素材と同様に、カスタムT同様、その洋服の着心地のキモとなるのはTシャツの形です。

程よくゆとりを持って人体に沿い、着心地の良さ・動きやすさ・着用時の美しさを実現させるため、大量生産用のパターン、前後対照に線を引いたTシャツの型紙からの脱却を第一に考えたそうです。

日本人の持つ上半身の前後差(気を付けの姿勢になった時に、側面の中心よりもやや手が前に出る。)を考慮し調整してあり、これによりスムーズな腕の可動を実現しています。

パターンにおいては線が主張しすぎないようにも意識したそうです。
大量生産では省略されがちな袖口や衿ぐりの縫い目のつながりにも型紙上で気を配っています。

・・・これらは実際に大量生産のTシャツと比べないと文章では伝わらないかもしれません。

 

縫製へのこだわり

 

洗濯機でガシガシ洗えるTシャツを実現するためには、生地のタフさと同様に、縫製がしっかりしていることも必要です。

縫製がしっかりしていないと、型くずれやほつれが発生してしまいます。
縫製の技術や縫製順序で、耐久性や着心地は大きく変わって来ます。

 

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縫製のこだわりは3つあります。

一つは袖口、裾の空(カラ)ロック×二本針始末です。
通常は袖口などは、生地を折り返して二本針ミシンで縫製して終わりです。
これだと、生地の端っこほつれることがあり、もしどこかの糸が切れると縫製が解けてしまいます。

そこで、まず生地端をオーバーロックミシンでかがり縫いをします。(通称「空ロック」)

 

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その後、折り返して平二本針ミシンでたたんで縫製しています。
これをすることにより、生地端がほつれることはまずありませんし、着込んでいくうちにどこかが糸切れしても問題は起きにくく、製品が長持ちします。

二つ目は袖の後付けです。

Tシャツの側面に縫い目があるTシャツ(前後を縫い合わせる形)を大量生産する場合は、脇から袖にかけて、一気に縫い上げます。その方が縫製効率が良く手間を抑えられるからです。

しかし、遠藤さんのTシャツは、通称「袖の後付け」という、脇線を縫った後に、完成品の袖のパーツをアームホールにぐるりと後付けする仕様になっています。

これをすることにより、脇の部分と袖の部分でねじれが起きにくく、腕の可動がよりスムーズになるそうです。

 

01縫製所の皆さん縫製工場のみなさん

 

三つ目は運針数(特定の距離間での針穴の数)です。
縫製の際の運針数を部分的に変えることで、縫いの密度を変えています。強度の必要な程度を箇所毎に算出して縫製しています。縫製は、長年お付き合いしてきた工場の中から、元々肌着専門の工場だった縫製技術の確かな、特に信頼のおける愛知県の縫製工場に依頼しているそうです。

 

副資材にもこだわっています

 

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商品に使われる副資材(ネーム類など)ですらも、着心地を阻害するものは付けるべきではないと遠藤さんは考えています。

・ブランドネーム→通常のブランドさんの製品につけるようなネームタグを首元にはつけません。
ブランドネームのスタンプによって、衿元のごわつきを無くしています。

・品質表示→脇に縫い込まれる品質表示(洗濯ネーム)の材質は、肌への負担やごわつきの少ない極薄のポリエステルタフタ素材を選定しています。

いかがでしたか?

これが今回の究極Tシャツが出来るまでの工程です。
今までの既存のTシャツへのイメージ、概念を覆すTシャツを作りたいという、強い遠藤さんの想いを感じる製品だと感じました。

はっきり言うと、こだわり過ぎています・・・

多くのこだわりを知って頂きたいはもちろんの事ですが、最後に僕が一番お伝えしたい事は“このTシャツを体験せよ”

この一言に尽きます。

是非体感した後に、この記事へ戻って復習して学びながら繰り返し、末長く味わって頂きたいTシャツです。

▽究極のTシャツは遠藤さんのサイトで▽

https://atelier-comopti.stores.jp/


作者情報(一覧を見る)
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大滝 洋之

Brightlogg,Inc.代表
歴史と伝統に敬意をはらい、ものづくりを現代の価値観で再解釈し、未来に繋げることを目指す。都内を中心に全国を巡りセコリ百景を運営する。