水運が盛んだったことから、
江東区・墨田区ではガラスの製造・加工の技術が発達しました。

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有名なものでは江戸切子などもこのエリアで作られています。

そんな江東区でガラス加工業を営むGLASS-LABの椎名さんに
お話をお伺いしました。

暖かい昼下がりに清澄白河駅から歩く事10分弱。広々とした道路をブラブラ歩いていると、通りに面した椎名硝子(ガラス)が見えました。

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初めてお会いするのに、初めてとは思えないで感覚でした。
椎名さんは丁寧にガラスの加工とはどういうものか、僕たちに説明をしてくれました。

吹きガラス(金属の竿にガラスを巻きつけ、息を吹いて形にする)や
型押しガラス(型枠にガラスを流し込み形にする)など製法が有りますが、吹きガラスは吹き竿とガラス種がくっついていた部分がどうしても盛り上がってしまいます。

その盛り上がっていた部分を研磨機を使って、粗い目の研磨から、徐々に細かい目の研磨に移して磨き上げていく研磨や、切断、穴あけなどのガラス加工が椎名硝子の元々の事業。

椎名さんのお父様と職人さんが担当して行っているそうです。

昔は椎名硝子がある江東エリアで、80社ぐらいはガラスの加工工場があったそうです。

今ではそれが激減して5、6社程度しか残っていないそうです。

椎名硝子では今でも1個のモーターで全ての研磨機が連結で動く昔ながらの
機械を利用して、研磨を行っています。

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椎名さんがガチャっと1つのスイッチを入れた瞬間に、
凛とした静かな空間の中、天井等至る所が息を吹き込まれたように動き始めます。
立体感のある音にとてもわくわくして来ます。これから何かが始まるーそんな音が拡がります。

ガラスの加工の工程は、顧客のオーダーによって様々だそうです。
1工程で完了する製品もあれば、4工程以上掛かるものも。

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仕上げはなんと、金属ではなく桐の木で作られた機械で研磨します。
桐の木はとても柔らかいそうで、最終仕上げには最適だそうです。
ここに研磨剤を塗り丁寧に仕上げると、曇っていたガラスが見違える様に透き通ります。

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壁には複数の現役の研磨機が。
研磨機の種類も様々で、金属製の砥石から、木製(桐)でできたもの、
あと研磨機の直径が1m程度の大きものから、20cmオーダーに応じて
使い分けています。

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この技術は代々受け継がれ、現在は椎名さんのお父さんが行っている
椎名硝子の加工の事業に加え、
椎名さんと弟さんが進める、既成のガラス製品にサンドブラストで模様や絵柄を入れる事業にも広げていることです。

その名もGLASS-LAB(グラスラボ)。

こちらの事業では企業さんに対して、大会のトロフィーや記念品作成を行っていて、
個人のお客さんに対しては、結婚式や御祝いの記念品作成なども行っています。
個人のお客さんへの制作では、椎名さんご本人とお客さんでの顔を合わせての打ち合わせを大事にしているそうです。

ネット上で簡単にやりとりするだけでは無く、実際にプレゼントを贈る側が時間とアイディアを割いてこそ、
プレゼントを受け取る側に思いが伝わると考えから、打ち合わせを必ず行うようにしているそうです。

熱い気持ちが椎名さんの表情から伝わってきました。

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GLASS-LABでは、サンドブラストのきめの細かさにも定評があるとか!
椎名硝子さんのような、ガラス加工会社の存在なくして、
ガラス製品の完成はないというのもうなずけます。

中々普段お目にかかれませんが、確かな技術と思いを持って仕事に取り組む姿が印象的でした。

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それでは、椎名硝子さんが最終製品に仕上げているガラス製品はどこがつくっているのか?
ということで、ガラス製造を行う、同じく江東区にある猿江ガラスさんにおじゃましました。

車で走る事10分。

実はこの取材も椎名さんのご紹介があっての事。
この場当たり的な(笑)臨場感を味わってもらうために、
製造工程であれば本来順序が逆ですが、この流れでご紹介させて頂こうと思います。

この日は10名弱の職人さんが作業をしていました。

普通のガラス工場は20名以上の職人さんが型吹きで製品を作るとことが
多いそうです。

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その中で、猿江ガラスさんは宙吹きにこだわり、少人数で製造しています。

「日本で一番小さい工場で、東京で一番大きい工房なんじゃないかな」と
おっしゃっていました。

日本でもトップクラスの技術を持ったガラス職人さんが集まっているようです。

皆さんが釜に向き合う姿は真剣そのもので、素人が簡単にフラフラするべき場所ではないのが伝わってきます。

職人さんを取り仕切るのが、
女性の職人さんの越中さん。

薬科大学を卒業後に美大に入り直しガラス職人になったという経歴の持ち主。
当時としては大学を2個卒業することも、職人になることも非常に珍しかったそうです。

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猿江ガラスはほとんどが受注生産。
猿江ガラスの仕事は、国の重要文化財の補修、国内の三つ星レストランの食器
更には、海外の有名ホテルやレストランの食器など、国内外に納品されています。

国外の納品先は、ラスベガス、香港、マカオ、ジャカルタ、フランス、シンガポール、モナコ、イタリアなどなど

フランスの5個ある三ツ星ホテルの内3個に、フランスのバカラを抑えて納品しているという逸話から評価の高さが伺えます。
メイドインジャパンの質の高さが世界標準であるという事実ですね。

なぜそれほどまでに、評価されているかというと、宙吹きに特化し、その技術を高め続けているから。他にはない技術力があるからです。

宙吹きとは吹き竿にガラス種を巻きつけ、整形する技法。

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宙吹きは型吹きとぐらべ、大きさ・形などが安定せずホテルやレストランに納品するには不向きとされていました。
1つとして同じものは出来ないと言って過言ではないので、大量生産には全く向いていない手法です。

他の工場がやらないところに目をつけ、宙吹きの技術を高めることで、
大きさ・形が揃っていなくても猿江ガラスで作った製品を使いたいと納品先に指定されるまでになりました。

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そんな猿江ガラスの中には随所にこだわりがあります。
例えばガラスの形を整形するイスも足元のペダルでジャッキを操作し高さを変えることができるし、
整形中のガラスを加工用に再加熱するダルマ炉も同じように高さが変えられます。

姿勢や自分の好きな高さで作業をすることで、製品の出来や効率に影響がでることから、考えられた仕組みだそうです。

モノづくりは人。
職人が最高のパフォーマンスをする事が出来ないと、最高の製品は出来ない。
この様な考え方で小さな改善を積み重ねているそうです。

話は戻りますが、そんな宙吹きなので、1個を作るのにも手間がかかります。

例えばコップにすると、
国内の型吹きでは一個500円程度
海外の型吹きになると一個40円程度で完成するなか、
猿江ガラスの宙吹きでは一個3000円程度の価格だそうです。

安売りは出来ません。

それでも注文が各所から来るのは、この宙吹きへのこだわりと技術の高さがゆえんです。

宙吹きだからこその面白さ、一つ一つの完成品が同じになることは無い。唯一無二の商品。
自分達の強みを高いレベルまで昇華させた、そんな工場だからこそですね。

国の重要文化財にも使用されるガラス成形技術とガラス加工一筋60年の加工技術。

東京の下町に素晴らしいモノづくりの連携を垣間見る事が出来ました。


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大滝 洋之

Brightlogg,Inc.代表
歴史と伝統に敬意をはらい、ものづくりを現代の価値観で再解釈し、未来に繋げることを目指す。都内を中心に全国を巡りセコリ百景を運営する。http://www.brightlogg.com/