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本日は宜しくお願いします。ずいぶん日焼けしていますね。もしかして海がお好きなんですか?

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はい。サーフィンを少しやりますね。最近は忙しくて毎年一回程度しか行けないんですが、それでも夏になると子供みたいに真っ黒になっちゃうし、ワクワクしちゃうんですよね。

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すごくわかります。僕も夏に海へ行けないと病気になります笑。このコーヒーも美味しいですね。この店内のコーヒースタンドも名児耶さんが一目ぼれして出店してもらったとか。

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本当に暑い時に飲むと気持ちがすっとするでしょ。これはねー本当においしいですよ。エスプレッソを薄めてるんだよ。焙煎したてで豆にもこだわって、この雑味のないアメリカ―ノはなかなか無いよ?

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飲みやすいのにしっかりしてますね。

名児耶さんは蔵前にある自社の店舗内に、このお気に入りのコーヒースタンドも呼んできてしまう徹底っぷりです。
ものづくりの産地でもたくさんお仕事をされていて、とても勉強になるお話しを聞くことができました。
今回は、名児耶さんのキャリア形成や、手がけたプロジェクトのお話しから、大学で教鞭も執る名児耶さん流の『デザイン論』をお届けします!

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下町のブラシ屋、次男坊の物語

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僕は東京の墨田区で150年近くも続く、海軍の甲板を洗うブラシなんかも作る製造業の次男坊でした。
100年以上続いてる会社は長男が継ぐものなんで、僕は将来は初めから好き勝手にやるつもりでいました。
昔から、一番好きだったのが美術とかデザインでしたね。なんでも自分で作ったりしちゃうヤツでしたよ。

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出身が武蔵野美術大学なんです。今でいう空間演出を専攻していました。
大学時代に横浜の高島屋と二子玉川の高島屋のショーウィンドウをやってる海外のデザイナーの方からアシスタントの募集がかかり、その仕事を手伝っていました。ですので僕は実際に手を動かして勉強をしていった感じです。

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その後、当時の花形の職種である、高島屋の宣伝部に配属が決まりました。『えーそんなかっこいいことやっていいんですかー!』って感じでした。これから自分の人生をおもしろおかしく作っていくぞーなんて意気込んでいました。
そんなある時、親父が倒れてしまったんです。

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普段はすごい元気な親父でした。でも、見舞いに行ったときに親父が弱々しい声で、お前も実家を手伝えよー・・・なんて言うんです。始めは『えーなんでおれは次男坊だから好きにして良かったのに何を言ってんだよー』なんて思いましたが、親父が生きてる内に親孝行でもしようと考え、高島屋の宣伝部を辞めました。
周囲からはお前がここにずっといるなんて思ってないよなんて言われました。(笑)

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実家の会社をデザインする

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そんなきっかけがあって、実家のブラシ屋さんを手伝うことになったんですね。

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はい。家業にいざ戻ってみると色々な課題が見つかりました。
ただ、うちの親父は品質のいいものはしっかりと作っていて、決して何かのまがい物やコピー物ではありませんでした。そこで考えたんです。これをどう世の中に発信していくかが鍵だな。そしてこの伝えるプロセスこそが僕が今現在もこの会社で一番考えているデザインってやつです。

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その当時の苦労やエピソードはありますか?

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ABC分析から、プロダクトのデザインまでなんでもしました。でもとにかく、予算がない。それが一番大変でした。カタログも作りたいと思い、知り合いのデザイナーやカメラマンさんに『出世払いで頼む!』なんて頼み込んで、安くかっこよく手作りで思考錯誤しながら進めて行きました。
そんなある時、親父の会社の商品を展示会で発表しました。当時の日用品の展示は特になにもデザインされた要素は少なく、そんな中で僕はショーウィンドウをやってたくらいなので、展示会のスペースをデザインしました。そうしたらびっくりです。展示会の一番奥のブースにも関わらず、人が殺到して『おーなんかここの展示すごいぞ』なんて言葉が聞こえてきました。
そんな時にデザインってすごい変わる力になるんだなー。って僕も実感しました。

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おかげさまでその後は順調で、スタッフも増やし、企画室を作ったり会社としても変わって行きました。」

デザインとは、息をすること

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名児耶さん、実際ここに、ごくごく普通のつくりの良い商品があるとします。この商品を名児耶さんが再デザインする時にどこから、どのようにメスを入れて行くのでしょうか。

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まずは何よりも一番大事なのが、売るためのものをしっかり作る事。
それができてから、それを伝えるための、カタログとか展示会とか、売り場の作り方とかを考えます。これらはいわばツールであり、この周りのツールを作って、商品の魅力を消費者の元までしっかり伝えて行くか…だね。
裏を返せば、今あるものでも、しっかり消費者に伝えたところで誰も喜ばないよってものは、売るものから変えないといけないよね。

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なるほど。商品の作り方にはよく、マーケットインやプロダクトアウトと呼ばれるマーケティング手法がありますが、名児耶さんはどの様な考え方なんですか?

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うーんそれは両方の交点に近いかな。作れる技術とか素材、機械をまず知ることが大事、そしてその技術を最大限に活かしつつ、いかに消費者の人が欲しい商品をつくって行くかなので基本はユーザーインだね。

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なるほど。ポテンシャルを一番引き出しつつ、買う人が納得していくものをデザインして行くんですね。

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デザインしていくねぇ。ちなみに僕はね、デザインして行くって構えた瞬間、そのデザインはなんか嘘っぽくなると思うんだよね。デザインってもっと空気を吸うようなことと同じ自然なイメージなんだよね。偉そうな言い方になっちゃうけど、良くデザイナーって肩書きを自分で付ける人はどこか肩に力入ってるんだと思うんですよね。

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デザインって日本語でなんて意味だか知ってる?

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えっ。それは考えたことがなかったです。

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例えば、日本人であれば侘び寂びはイメージとして正しく認識していると思うけど、一言では言い表せないよね?ではデザインはどうかな?
私が思うに日本人の9割以上はデザインの単語の意味を間違えて使っているよ。

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ううーーーん…。

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デザインって言うのはね、総合的な造形計画。計画のことなんだよ。最終的な形の事だけではなくて、最初から最後までをきっちりやって行くことが本当にすぐれたデザイン。美的造形性もしっかり行っていくことをデザインっていうんだよ。私はこれを学生たちにもずーーっと言ってるの。

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おお!なるほど……。確かに、通常はコンセプトの構築から始めますもんね!
ところで、名児耶さんは様々なプロジェクトを進めていますよね。それについて少しお話聞かせてもらえませんか。

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はい。まずこの自社企画プロダクトの『+d(プラス ディー)』のコンセプトは、デザイナーから出て来る「こんなものあったらいいよね」っていう気持ちを大切にして、デザイナーの想いをしっかり伝えて行きたい。そんなブランドです。デザイナーが自ら持ち込んで来たり、色々なところで出会ったり、作りたい物を持って来てよって言うのがこの『+d』です。

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守ったヤツは負ける!産地を盛り上げるために。

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それと名児耶さんは産地を盛り上げるプロジェクトなんかもされてるんですよね。

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うん。佐賀県の有田焼の産地にある150の窯元のうち、26の窯元は新しい未来に向かって、何かないかを常に探求していて、その人達を有田焼の代表選手として伝えようと取材していました。これがもう本当に面白すぎて、行政やCCCさんと話を通し、本まで出版してしまいましたよ。26の窯元をこの本を持って歩くと、特典が付くんですよ。
僕はインバウンドを狙っていて、もっと人が外部からくることによって、来てくれた人には作家さんの想いも伝わるし、工房もきれいになるし、そうそれこそミラノサローネを日本でやってみたいと思って。いい加減、大して外国語をしゃべることが出来ない日本人に外に出ろなんていったってしょうがないんだから「相撲を取るならこっちの土俵に連れてこい」なんて思いで、産地全体のデザイン、ブランドデザインをやってます。

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「ミラノサローネ トウキョウコヨーネ」なんてね(笑)。

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笑。

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デザインを活かして、用いて、世の中を元気にするために僕らの会社はやっています。いっさいの工程をオープンにし、上手くいった事を共有し、もっとデザインを活用していこうよって活動をしています。

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伝統工芸と現代工芸を合わせたものが一番面白いよね。守ったヤツは絶対負けるんだよ。伝統ってものは革新の連続なんだよ。有田焼を見ていても思うけど、400年も歴史があると何でもありだよ。逆にわざと古っぽく作り人だっているくらいなんだから。

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守ったヤツは負ける。響きますね!

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産地にもぐりこんだ時に工房にショップが併設してあるっていうのは新しいことでしょ。そんな産地のプロデュースをしています。
でも、やれやれって人に言うだけでは無くて、自分たちでも民間主体で街を盛り上げることをして行こうとしています。ここ、蔵前(くらまえ)だってそうです。まず自分の足元でちゃんと行動しないとね。

日本の街づくりと、愛のあるデザイン

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日本の進化が問われるのはオリンピックの後。東京オリンピックまでは世界が注目しているので当たり前に頑張るんだろうけど、問題はその後。オリンピックで注目された後も、世界の人が日本により興味を持って来てくれるかどうかが大事ですよ。シンガポールも上海も北京も頑張ってるけど、このあたりの街は造られた街でしょ。

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確かに、一時的に各所で需要は増えても、その街の本当に魅力がないとオリンピック後の継続性はないですもんね。造られた街とはどういうことですか?

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蔵前を見てごらん。造られた街ではないでしょ。でも東京の青山は造られた街じゃないかな?産地の有田に行ったって造られた街ではない。そう、民間が何かやればいいんだよ。東京都だって台東区だって蔵前に何かをしたわけじゃないよ。デザインでも同じだけど、いまの自分の立ち位置を知るために、ミクロとマクロの視点が大事なんだと思いますよ。そうして世界を見てみると、日本人はもっと自分に自信を持っていいと思うなぁ。別に天狗になる必要はないけどね。

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地域の色が地元から湧き上がってくるようなイメージですね。そして自分の立ち位置を見直すこと。忙しく毎日過ごしている人にとっても、大事なことですよね。

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僕は世界中色んなところに行って来たけど、一番好きなのは日本だよ。今はアメリカや中国が世界をリードして行く構図が出来上がりつつあるけれど、彼らは壊して新しいものをつくろうとするじゃない?
でも、日本人ってのは「和」を大切にするし、古いものを大事にしたり、相手の事を考える気持ちがあるよね。アートって言うのは自己表現でしょ。デザインっていうのは思いやりをもって誰かの為にすることだよ。
それはつまり、もーっとひと言でいうと『愛』なんですよ。

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!!(感動)…スッと心に入ってくる言葉ですね。

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そう。侘び寂びだって、一人で寂しい時間のあの空虚さの美しさとか…朽ちて行く、寂びれていくものに儚さを感じたり…こういった日本人の心の中に眠る感覚を、今海外の人もだんだんと理解しようとして来ているよね。

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これからは君たちの時代だよー!僕もまだ引かないんだけどね(笑)

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おわりに

名児耶さんの素敵なお話しを聞いて、まっさきに心に思い浮かんだのは、セコリ百景を読んでくれている人たちや、取材させて頂いた人たちの顔でした。
もっと表情豊かに現場の空気や、産地の魅力、つくり手の方の熱を伝えるにはどうしたらいのか。
何をどう調べ、編集し、伝えていく事が、読んでくれる人のためになってメディアの価値になるのだろうか。

名児耶さんからもらった気持ちを心で復唱させつつ、セコリ百景をデザインしていきます。

店舗情報

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KONCENT :東京都台東区蔵前2-4-5
営業時間:11:00~19:00


作者情報(一覧を見る)
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大滝 洋之

Brightlogg,Inc.代表
歴史と伝統に敬意をはらい、ものづくりを現代の価値観で再解釈し、未来に繋げることを目指す。都内を中心に全国を巡りセコリ百景を運営する。http://www.brightlogg.com/