伝統工芸、真田紐の起源

戦国時代の英雄真田幸村が愛用していたことから、その名がついたと言われるのが「真田紐」。

1600年頃、関ケ原の戦いで敗れた真田家は高野山に幽閉され、家来達が内職として紐を織っていたと言われています。刀の柄巻き(つかまき)や鎧兜の着用時の紐など、軍需品の一つとして扱われていました。

そんな真田紐を、現在も織るのが金沢市神野町にある「織元すみや」。国内で生産される真田紐の約85%がすみやさんで生産されています。創業昭和3年から数々の職人さんの手から生み出されてきた真田紐のものづくりの軌跡と現在に迫りました。

 

アイキャッチ

工房に入ると、おおよそ20〜30代くらいの若い職人さんが多く、想像とは異なる真田紐の製造の風景に驚きました。

 

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幅は6mm〜30mmの細い紐ですが、武具に使われるほどの強度を持っています。力を込めて引っ張ってみましたが、ビクともしませんでした。

これが織り紐の最大の特徴でもある強度です。経糸(たていと)のテンションが強く、緯糸(よこいと)の打ち込みがとても細かく、生地の目が詰まっています。

真田紐の種類

織元すみやが作る真田紐は「正絹袋紐」「加賀錦袋紐」「木綿袋紐」「木綿平紐」の4種類の仕様に分かれています。それぞれの紐の特徴をご紹介したいと思います。

 

「正絹袋紐」(しようけんふくろひも)

正絹

経糸に細い絹糸、緯糸に木綿を使用しています。

打ち込みが細かく、上質で光沢があり、色あせがしにくいのが特徴。

最高級の真田紐です。

 

「加賀錦袋紐」(かがにしきふくろひも)

加賀錦

経糸にポリフォニックと呼ばれる合繊繊維、緯糸に木綿を使用しています。

絹のような高級な光沢があり、堅牢度も高く、色あせ・色落ちに強いのが特徴です。

 

「木綿袋紐」(もめんふくろひも)

木綿袋

経糸(たていと)と緯糸(よこいと)に木綿を使用します。

自然な風合いで、滑りにくく、丈夫で結び目が崩れにくい袋紐(二重)です。

また、同素材の平紐(一重)を「木綿平紐」(もめんひらひも)と呼びます。

 

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真田紐は経糸と緯糸を交差させて生地のように織られる紐です。

織り紐の特徴は、丈夫なことに加えて、独特な織り柄が出せることです。戦国時代には、この織り柄を利用して、各武将は独自の柄や色の真田紐を刀や鎧等に使っていたとう歴史もあるそうです。

数百パターンものサンプルを見せて頂きました。思考錯誤を繰り返す中で、新しいデザインが生まれるそうです。

真田紐の用途

真田紐を求めに来るお客さんには様々な方がいるそうです。今までは美術品や陶器・茶器入れなどの工芸品を入れる桐箱用や、着物の帯締め、帯留めの代わりとして使われることが多かったのですが、最近では鞄の持ち手、家具の一部に使われるなど、用途の幅が広がってきているそうです。伝統工芸が盛んな金沢では作家が作品の一部に真田紐を使うこともあるそうです。

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真田紐はしっかりとした力強さをもちながらも、素朴な織り柄が上品な印象です。工芸品とも相性が良さそうです。

 

1人でも多くの方に真田紐を知って頂きたい

真田紐の説明をしながら工房内を案内してくれた角田さん。

「1人でも多くの方に真田紐の歴史と名前を知って頂きたい」と、サンプルを分けて下さいました。角田さんは真田紐のデザインにも携わりながら、出荷業務や工房に直接買いにこられたお客様の対応をしています。角田さんは真田紐を使った作家さんの作品も紹介して下さいました。「真田紐が様々な形で使ってもらえることはとてもうれしいことです」と作家さんの活動が掲載された新聞の記事を丁寧に保存したファイルも見せて下さいました。

角田さん

角田さんはとても楽しそうに作家さんの紹介をしてくれました。休日も作家さんの展示会を見に行くなど、本当に真田紐のことが好きなんだなぁと感じました。

お預かりしたサンプルはこれからオープンする金沢セコリ荘のサンプルスペースに展示しますので、気になる方は是非手にとってみてください。

作り手と使い手が伝えるものづくり

最後に工房内で働く村田さんに真田紐の魅力についてお伺いしました。村田さんは真田紐のデザインと製造に携わっていて、全ての製造工程を把握している若手の職人さんです。

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「最大の魅力は、一本の紐からいく通りもの柄や色が生まれていくとこです。」と色とりどりの真田紐を前に語って下さいました。

軍需品とされ重宝した真田紐ですが、現在は刀を下げて鎧をまとう人はいません。使い道の減少と共に消えてしまうものづくりもある中で、形を変えずに用途の広がりを見せるものはとても珍しいと思います。作り手は新しい色を織り出し、使い手が使い道を築く。真田紐は時代の波に逆らうことも呑まれることもなく、作り手と使い手の両者の感性によって、これからもずっと受け継がれていくものづくりだと感じました。


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下山
下山 和希

東京の某アパレル会社でデザイナーを経て、2015年9月に金沢に移住。
北陸産地の工場や工房の訪問取材をしながら、金沢セコリ荘のディレクターを務める。金沢文化服装学院で教鞭も執る。